研究紹介

マリモカーボンについて

マリモカーボンは,酸化ダイヤモンドを中心核として,その周囲に炭素繊維が球状に絡み合った特殊な構造のカーボンです。これまで広く用いられてきた,粒状炭素の集合体や,繊維のみで構成されるカーボンナノチューブなどとは違った特性を持っており,当研究室ではこれを使って,高性能な電池用材料を開発しています。
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(a)マリモカーボンのSEM像
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(b)マリモカーボン表面の拡大SEM像

 

燃料電池に関する研究

燃料電池は,燃料になる水素ガスと酸素ガスが,内部で効率的に拡散していくことが重要です。これまで使われてきた炭素粒の集合体では,ガスの通り道にあたる空隙(何もない開けた空間)がランダムに形成されてしまうため,燃料ガスは迷路のような空間を進んでいかなければならず,必ずしも効率の良いものではありませんでした。
そこで当研究室で検討しているマリモカーボンを用います。マリモカーボンであれば,繊維の隙間にガスが通りやすく,抵抗の少ない効率的な拡散が行われます。
これまでの研究から実際にマリモカーボンを用いると,発電性能が20%程度向上する,ということがわかっています。また,炭素の構造が規則的で丈夫なため,電池としての寿命は10倍以上も長持ちする,ということも明らかとなりました。現在では,マリモカーボンにとって最適な発電条件を模索し,さらなる性能の向上に取り組んでいます。
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(左)炭素粒集合体内部でのガスの流れ
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(右)マリモカーボン内部でのガスの流れ
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Pt/マリモカーボンTEM像
 

 

リチウムイオン電池に関する研究

高性能なリチウムイオン電池用材料を開発するため,当研究室では水熱合成を用いた電池材料とカーボンの複合化に取り組んでいます。
実際の電池内部では,電池材料とカーボンが均一に混ざっていないために,抵抗が高く電気が流れない部分や,逆に電気が集中するため劣化しやすくなる部分が存在します。
そこで,マリモカーボンの隙間にこの電池材料を詰めこみ,炭素の繊維と電池材料とが均一に分布する形ができます。
当研究室ではこれまでにTiO2,Li4Ti5O12,LiFePO4,LiCoO2,LiMn2O4などの電池材料とマリモカーボンとの複合化を行ってきました。現在は,他の材料との複合化を検討するとともに,複合化した材料の特性を調べ,更なる性能向上に取り組んでいます。
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(左)混合の不均一な状態(これまでの電極)
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(右)均一な混合状態(マリモカーボンとの複合化)
   
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(左)Li4Ti5O12/マリモカーボン複合体のSEM像
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(右)Li4Ti5O12/マリモカーボン複合体表面の拡大SEM像